連載ブログ小説　第五話「恋の寿命は、八月のセミと同じくらいか」｜田無で足つぼマッサージ好きに好評！リラクゼーションもみーな

第五話「恋の寿命は、八月のセミと同じくらいか」

ごめんね、ごめんね、ごめんね……。

三回くらい？　心の中で呟いた。

「ごめんね……」

四回目を呟く。

後悔の念を抱いた私の心を、もみーな茶が落ち着かせてくれる。杏理の「オリビアを聴きながら」の歌詞に出てくる、「ジャスミンティーは、眠り誘う薬」……的な感じで。ごめん、昭和。世代じゃないけど、お母さんがカラオケで歌ってた。アラサーだけど、私そんなにおばさんじゃないからね。誤解しないで。

施術を終え、受付へ戻ると、小島さんがお茶を用意してくれている。

「もみーな茶」の概要が書かれた紙が、机に置かれてある。

えーっと、なになに？　もみーな茶には色々なものがブレンドされている？　何か美容とか、不眠だとか、色々なものに効くらしい。

へー……。落ち着いた気分の中、私は心の中で呟いた。

壁には、施術のメニューが書かれたポスターが貼ってある。「オプション」というものがあるらしい。頭蓋骨リリース、肩甲骨ぐるぐるほぐし、ワンポイントストレッチ。それに、うでトリートメント……新コースだって。

色々あって、迷っちゃう。でもこれだけコースがあると、通うのも楽しくなっちゃいそう。いや、通っちゃおうかしら……。

「お疲れ様でした」

小島さんが、椅子に腰掛けた私の横で立膝になり、会計を伺ってくれる。

「お体、スッキリ出来ましたか？」

「はい、凄く良くなりました」

会計を済ませ、靴を履く。店を出る手前、小島さんが爽やかな笑顔で私を見送ってくれる。

「後悔」という名のコリも、少しほぐれたように感じた。おかしくも、渡辺君に似た彼の施術によって。

田無の駅に着いた。これから何しようか？　買い物でもしようかな？　近くのアルタで買い物をしようと、私は踵を返す。

「え！」

思わず声を上げる私。

「ど、どうして……？」

予想だにしないことが起こった。どうしてここにいるの、ねえ！

「菊池さん……」

彼が私に呼びかける。どうして？　　もしかして、私に会いに来たの？　田無まで……。でも、どうして？

「渡辺君……」

八月のセミの鳴き声が、私の耳に木霊する。一週間のセミの命。私の恋に寿命があるとすれば、それはどれくらいなのだろうか？

爽やかな夏風は、正解など教えてはくれない――。

（続く）

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